挫折の日々の中で人の死に直面。後悔してもやり直せないもの。
前回の記事で、大学職員としての生活の日々のことを少し書いた。
この期間の中で一番記憶に残っていることが2つほどある。
1つは、彼女の祖母の死だ。
このことが、自分自身の考えに大きな影響を与えた。
人はいつか死ぬ。そのことを皆、頭ではわかっていても実際にどういうことなのかということを理解している人は少ないと思う。
あるいは、理解したくないと心のどこかで思っているのかもしれない。
私は27歳まで、人の死というものに直面したことがなかった。自分の周りの人が亡くなっていないというのは、それはそれで良いことなのだが、人が亡くなるということについて全く想像もしたことがなかった。
そのため、人の死に直面したとき、これほどまでに悲しくこれほどまでに儚いものなのかと、凄く衝撃を受けた。
しかもその相手が、彼女が母親のように慕っている祖母だったことも私の心をしめつけた。
彼女の祖母は、彼女が小さい頃から毎日面倒を見てくれた親のような存在。
親は共働きだったため、家にあまりおらず、祖母がご飯のお世話や身の回りのことをしてくれた。
私と彼女が同棲し始めてからも、心配して毎日のように電話がかかってきていた。
彼女と祖母が毎日電話するのが日課のようになっていた。
私もその光景を見て、いつも微笑ましい気持ちになっていた。
そんな光景が、ある日を境に一瞬で消えてしまうなんて、今でもそれを思い出すたびに、言いようのない思いが込み上げてくる。
あの時こうしてたら…とか、そういう後悔は山ほどある。
人生には、後悔してもその後の行動で挽回できたり取り戻せたりするものもあるが、人や動物の命はいくら後悔しようと戻ってはこない。
そのことを強烈に教えられたのが、この出来事だった。
私がこれほど落ち込んだのだから、彼女の気持ちを考えるといたたまれない気持ちなる。
実は彼女はつい最近まで、祖母の死を受け入れることができなかった。祖母は本当はどこか旅行にでも行っていて、ただ帰ってこないような感覚で過ごしていたらしい。
もしかすると、自己防衛本能が働いて、理解しないように遠ざけようとしていたのかもしれない。
彼女には受け入れるまでの時間が必要だった。
死を受け入れるということは、居ない事実を認めることになる。それは認めたくないと誰もが思うと思う。
この出来事が自分にとっても、彼女にとってもタスマニアへ行くきっかけの1つになったといえる。
2つ目は、市役所職員受験に落ちたことだ。
これはもう笑うしかない。
また今までと同じことをしようとしていた。
海外に行くにあたって戻ってきたときが心配だから、先に公務員試験に合格して、4月入社までの期間に海外に行こうと考えて行動したものだ。
結局またリスクを恐れて望んでもないことをして失敗している。
この落ちたという事実は、単純に落ちたのとはまた違う。
合格が約束されていたのに落ちたということだ。
当時、私の知り合いに市役所関係で働いている人がいて、筆記試験さえ通れば合格させてもらえる話が来ていた。
筆記試験は満点に近い点数で合格して、あとは面接を残すのみだけの状況だった。
面接もよほど失敗しなければ大丈夫だと言われているなか見事に失敗した。
面接は集団面接。
受験者数人で黒板を見ながら共通の課題に取り組むというもの。
面接官は、自分たちを取り囲むように15名ほどいた。
自分は当時目が悪く、メガネをかけていなければ遠くの細かい文字などは読めない状況だった。
集団討論を想定していたため、メガネはいらないと思い持参せずに面接に臨んだのだが、それが失敗の始まりだった。
黒板を見ながら1つ1つ課題を解決していく集団討論で、自分の席からは文字が見えない。
今思えば、それがわかった時点で席の移動を申し出れば良かったものを、それをせずに課題に取り組んだ。
当然、黒板の文字がよく見えないので、何か問いかけられても皆とは1テンポ遅れて反応することになる。
情けない話、当時の自分はただ一言、席の移動を申し出ることすらできなかった。
申し出ると、変な印象を持たれるのではないかという不安があり、見えるフリをしていた。
そんなバカなことをする方が、印象が悪くなるにもかかわらず、自分は変に目立たないようにという気持ちでいっぱいで何もできなかった。
人間力の無さ。
それが顕著に現れた出来事だった。
そして、その結果見事に公務員試験に落ちた。
正直、公務員試験は簡単に合格できるだろうと思っていた私は、再び絶望を味わうことになった。
唯一幸いだったのは、公務員試験に費やした時間は半年もなかったので、会計士試験のような無駄な時間を多く過ごさなくて済んだことだった。
ただ、会計士試験で自分の望まないことをして痛い目にあったにも関わらず、同じようなことをするあたりは、性格はなかなか直ぐには治らないものなのだなと感じた。
この大きな2つの出来事が、私をタスマニアへと導く大きなきっかけになったと言える。
人生はいろいろ。本当にいろんなことがある。
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※番外編